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山梨大学教育人間科学部附属養護学校

平成12年度情報教育の実践


事前学習での活用〈小・中学部〉

 本実践の概要
 小学部では,遠足などの事前学習の際,日時や目的地を伝える手段として,パネルシアターや,ぺープサート,写真等旧来の方法で伝えていた。しかし,児童の実態からそうした情報を注視することが難しい児童や,興味を示しすぎて,持ち去ってしまう児童などもいた。そのため,powerpointを使ってプレゼンテーションを作成し,こうした事前学習に活用してみることにした。 また中学部でも同様にpowerpointによる事前学習のプレゼンテーションや活動内容をホームページ化して検索していく手法などを取り入れ提示した。このようなソフトを使うことの利点は,デジタルカメラからの情報を使うことが手軽にでき,また,イラスト,文字エフェクトなど,児童・生徒にとってより視覚的に有効な情報を取り入れやすいことにある。また,効果音なども取り入れることで,聴覚からの刺激も期待できることにある。
 このような利点を生かして作ったプレゼンテーションを利用し,遠足,校内・校外宿泊学習,修学旅行などの事前学習,また,日常の学習のなかでのグループ分けなどの紹介にも利用した。利用方法は,PC上のプレゼンテーションをプロジェクターでスクリーンに投影した。
 実際に利用した児童の様子は,どの児童もとてもよく画面を注視していた。これは,日常見慣れたテレビ画面のように感じられること,また,自分や友だちの顔などが,大きく映し出され,興味をひきやすいことなどの理由が考えられる。また,カレンダーなどには興味を示さない児童も,日時などをスライドやワイプで,映し出すことで,画面に興味を示すことができた。理解には直接結びつかなくても,より多くの視覚情報を取り入れやすくなるということは,確実に言えるのではないかと思われる。
 また,小学部の修学旅行の事前学習では,インターネットを使って旅行の目的地のホームページを呼び出し,その画面をスクリーンに映し出した。1名の児童は画面上でクリックする場所がわかり,一人でマウスを操作してインターネットから遊園地の写真などを呼び出して,みんなで見ることができた。
 中学部では3学期より週一回の「ゆとりの時間」を利用してPCやインターネットにふれる機会を設けてきた。一人でマウス操作ができる生徒は数名であるが,操作が難しい生徒も自分にとって興味・関心のある情報がネット上で得られることを理解してきて,自分から情報を選択しようとする姿も見られてきた。
 このようにPC上の映像をスクリーン及びTVなどに映し出すことはどの児童・生徒にとっても有効な視覚情報手段であると思われる。
 今後の課題として,教師がPCを操作して映像を児童・生徒に提示するだけではなく,マルチメディアボードなどを用い,児童・生徒が自分で画面を変えるなどの操作をしていけるように考えていきたい。そうすることでより児童・生徒が興味を持ってPCなどの情報機器に親しめるようにしていきたい。


「お世話になった先生にメールを送ろう〜国語科〜」〈高等部〉

 本実践の概要
 本校高等部では国語・数学の授業を少人数のグループ別に行っている。本実践のグループは1〜3年生が1名ずつの計3名に教師が1名のグループである。授業は情報ルーム(コンピュータ室)で行い、各自が1台ずつコンピュータを使用し、情報ルーム内のコンピュータは全てLAN接続されている。
 今回の授業は、初めてコンピュータを使用した授業であったため、キーボードに慣れることを第一の目標においた。生徒たちは公立中学校時代に多少の経験があり、カナ入力により自分の力である程度文字入力ができた。しかし、言葉を口にすることができるが、文字にすることができない場合もあり、そんな時はキーボードで1文字ずつ入力し、変換しては正誤を確認しながら進めることができた。意外にもワープロソフトの漢字変換機能が生徒達の教師役となり、生徒たちは間違いも恐れずにどんどん入力していった。また、恩師へのメールということで、手紙の書き方にも注意させた。

 本実践を通して、生徒たちにメールでの手紙のやり取りを十分体験させることができた。コンピュータに向かいキーボードを打つ表情は、他の授業とはひと味違うものであり、新しい楽しみ・喜びを見出したようにも感じられた。今回の授業の第一の目的はキーボード操作に慣れることであったが、コンピュータの起動・終了を含めた操作方法にも生徒は慣れ親しむことができ、その後休み時間などを使い、積極的に操作する姿が見られている。
 また、学校以外で人と交流する機会が少ない本校生徒にとって、コンピュータを通して多くの人とつながりを持ち、人の考えに触れたり自分を表現していくことは、将来社会に出て生きていく上でも大いに役立つことである。今後も生徒の興味や関心に応え、情報活用能力を養うためにも、コンピュータを利用した情報教育を続けていきたいと考える。


       例:現場実習先への手紙
○○産業のみなさんへ

三週間の実習をありがとうございました。
始めはとても不安でした。先輩がやさしく
教えてくれたので作業 できました。
休み時間はお茶やお菓子をくれて
ありがとうございました。 写真1
実習期間に教えてもらったことを学校にも
いかしていきたいです。
これからはとても朝と夜が寒くなるので、
体には気をつけてくだ さい。
仕事はとても大変ですが、頑張ってください。
私も学校で頑張ります。
ほんとにありがとうございました。

山梨大学教育人間科学部 附属養護学校 高等部 ○○○○より

「自己紹介のポスターを作ろう」〈高等部〉

 本実践の概要
本実践では生徒たちの情報活用能力を養うことを目的に、自分やクラスメイトの写真をコンピュータに取り込み、その説明も記述することでポスターを作ることに取り組んだ。本校情報ルームにはカラーレーザープリンターが設置されているため、コンピュータで作成したものが、美しくまた瞬時のうちにプリントアウトされる。その素早さや鮮やかさがさらに生徒たち意欲づけや達成感をもたらせている。
 今回の実践ではある程度キーボード操作にも慣れた生徒たちを対象としている。生徒は多少の誤字脱字はあるものの、自分の力で文章を作ることができ、写真の説明も思い思いに表現した。また、文章の字体や大きさ、修りなどもアレンジすることに取り組ませたところ、簡単に見栄えがする表現ができることで、生徒たちはより意欲的に取り組んだ。一通り文章や写真を配置したところで、最後にポスターとしてのレイアウトも考えさせた。細かいところまでは難しかったが、字の大きさや写真の位置など、意識して生徒はポスター作りに励んでいた。

 マウスやキーボードの簡単な操作で驚くほど見栄えがするポスターになるとあって、生徒の意欲は非常に高く、ポスターを仕上げた後の達成感・満足感も格別のものであった。とかく、きれいな字や上手な絵が評価される社会において、今まで自信を持って字や絵を描いてこられなかった生徒もいたかもしれない。そんな彼らもコンピュータを利用することで手描きの作品とはまた違った美しいポスターが作成できたことは、大きな自信につながったことだろう。自分の心に感じたことをありのままに素直に表現することは大切なことである。鉛筆と紙を使い、自分の手で自由に表現できる生徒は別であるが、それが苦手で、今までそうした表現の仕方を知らなかった生徒にとっては、こうしてコンピュータにより表現していくことがすばらしい手段となろう。このような実践を通し情報活用能力を養うことで、生徒たちが自己表現の手段をどんどん増やしていってくれれば幸いであると考える。


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