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 インターネットを利用したフランス語学習メソッド

(作成例の紹介)

教育人間科学部国際文化講座 森田秀二

 

インターネット利用によるフランス語学習の可能性については、ハイパーテキスト性、インターラクティヴ性を中心にすでに実践例に基づき論じたことがある(「インターネットを利用した フランス語学習の可能性」『山梨大学総合情報処理センター研究報告』Vol.1, 1997)。今回は、新たな実践例(以下、AVJメソッドとする)を報告したい。AVJメソッドは筆者が平成12年に上梓したフランス語教科書『A vous de jouer:ゲームしながらフランス語』(平成12年4月、朝日出版社、全53頁)を基にした html ベースのフランス語学習メソッドである。基になった教科書は、クラス内でインフォメーション・ギャップ・ゲームをしながら初級レベルのフランス語運用力を養成する趣旨のものであったが、AVJメソッドは限られた授業時間数を補完するための自習用副教材として開発した。開発にあたって、コンピュータとしてはマッキントッシュ(PowerPC G4)を、html ベースのレイアウトには DreamWeaver(3およびMX)及び GoLive(6.0)を主に使用し、JavaScriptの書き込みには Nisus Writer (5-J 及び 6-J)を用いた。

JavaScript によるメソッド開発は楽しい経験だったが、時間的には相当な負担となった。通常、語学教官はプログラミングを専門とはしない。したがって、できる限り既製のプログラム生成支援ソフトを使うことがまず考えられる(学習支援プログラミング用のフリーソフトとしては Hot Potatoes がある)。 ただし、既製のソフトでは思うような形式が使えないという難点もあり、今回は筆者がプログラムを組んだ。このようなメソッドを作るにはプログラミングの専門家との協同作業が望まれる。学生の学習状態をネットワークで管理するというさらに進んだメソッドに進化するためにはCGIなどのプログラミングも必要となり、専門家の協力が必須となろう。

インターネット利用による学習方法のメリット、さらにhtml や JavaScript 使用の際に生じるフランス語アクセント処理の諸問題については先行論文で詳説ずみなので、ここでは改めてふれない(前掲論文、および「フランス語のアクセント付き文字の表示および処理」『山梨大学総合情報処理センター研究報告』Vol.3, 2000、参照)。本稿はAVJメソッドそのものの提示を目的としているので、メソッドの特長については以下に箇条書きで述べるに留めることとする(1)。なお、AVJメソッドでは外部リンクを張り、関連する文法項目やテーマについて既存のインターネット・リソースに利用しようとした。外部とのハイパーリンクによる学習メソッドの可能性については別項を設け、考察した(2)。

(1)AVJメソッドの特長

  • マルチメディア 性
    • 文字言語、絵や写真などのイメージ資料、音声資料を使用し、読む・書く・聞くことができる環境を提供している。話す機能はないが、この点は現時点におけるCALLの限界と考えることもできる。技術的には音声分析によって正しい発音かどうかを解析する学習メソッドは存在するが、オシロスコープを見ながら発音矯正をおこなうのは初学者には負担が大きすぎる。一方、CALLは他の三つの機能を果たしており、目標達成型の独習メソッドとしては十分有益であると筆者は考える。コミュニケーション能力の育成にはやはり授業演習などで対人的なやりとりが欠かせないであろう。
    • 動画資料は今回は使用していない。
  • ハイパーテキスト性
    • 内部リンクによるマルチメディア資料間の連携により、上述の各種メディアがハイパーリンクによりクリック一つでアクセスできる。
    • 外部リンクによる擬似的なネイティブ環境世界の構築については(2)を参照。
  • インターラクティヴ性
    • あいさつなどの擬似的対話によって、学習意欲を高めることが期待される。
    • 目標達成型の独習メソッドには欠かせないのが自動解答システム(解答の自動的正誤判断と点数化)である。AVJメソッドは入門用なので、正誤判断による学習者との対話性に力点をおいた。次の目標としては、まとめの実力問題などを用意して、全体の点数化もできるようにしたいと考えている。

 

(2)外部リンクによるハイパーテキスト性

外部リンクによるハイパーテキスト性について、AVJメソッドではまだ本格的な試みは行っていないが、急速に充実しつつあるインターネットのフランス語学習リソースを効率的に利用することにより、総合的なフランス語学習環境を構築する可能性が生まれつつある。現在でも以下のような項目についてインターネット・リソースが存在する。

  • 文法、語彙、つづり:FLE(第二外国語としてのフランス語教育)サイトが各種存在する。
  • インタラクティブ問題:同上。
  • 発音:FLEサイトに加え、中・上級向けにはインターネット・ラジオが充実している。
  • ゲーム:FLEサイトや商業サイトなどでも語学学習用ゲームがある。
  • 辞書:出版社、研究所などのサイトで利用可能である。
  • フランス文化:マスコミ関係のサイトに加え、各種の情報や趣味のサイトなど膨大なリソースがある。

FLE用のインターネット・リソースを載せた主なサイトを以下に挙げる。

本学でも筆者が担当する演習授業「専門科目:フランス語 CALL I, II」「主題別科目ホ:フランス語W(インターネットによるフランス語)」のためにCALLページを開設しており、学生が作成したフランス語ホームページも公開している。

外国語学習の場合、実用的なレベルに達するにはどうしても自主学習時間の確保が必要になるが、その際、授業外の学習環境を整えるうえでコンピュータ利用は極めて有益な手段である。海外ではインターネット上に以下のような優れたフランス語学習メソッドが存在する。

一方、フランス語学習に関して、我が国ではまだまだそのためのコンピュータ用教材の開発が遅れている。仮に既製の教材を利用するとしても、使用者数によっては費用もなおざりにできない問題である。その点、インターネット上にすでに存在する無料リソースを学生のレベルに合わせて有機的に統合することができれば、外国語学習の重要なツールとなることが期待される。

AVJメソッドは、先に述べたように基本的な部分はフランス語教科書『A vous de jouer:ゲームしながらフランス語』に依拠しつつ、JavaScript によりインターラクティブ性を高めたものであるが、 外部リンクによるハイパーテキスト性を確保するために、各課でフランス語圏の関連サイトにリンクを張り、語彙の補完、文法問題の復習、関連テキストの読解演習、さらに関連テーマについての文化学習に供することができるように配慮した。ハイパーテキスト特有の国境を越えたサイバー空間への帰属感を多少は味わうことができるのではないかと期待している。

 

 


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    • 自動解答プログラムでは大文字・小文字の違いやスペースの有無も区別してしまいますので、注意してください。
    • 外部リンクを使用していますので、できればインターネットに接続してお使いください。
    • 音声資料として aiff ファイルを使用していますので、聞くためには再生用プラグインが必要です(QuickTime Player、Windows Media Player,RealPlayer など)。
    • フランス語のページはすべて自動的に欧文フォントで表示されるようにしてあります。 文字化けが生じた場合は欧文フォント(Latin-1、ISO-8859-1)として和文フォントが指定されている可能性があります。その場合は、ブラウザの環境設定で Arial, Geneva,Times などの欧文フォントに設定してください。

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