§2 デジタル・カメラとアナログ・カメラ

 

 前節では、デジカメを使っていろいろなものを撮影して遊んだ話をしたが、この節では従来のカメラと比較しながらその特性を考えてみたい。
 デジタル・カメラが、ハロゲン化銀乳剤を塗布したフィルムに光を当てて潜像を形成する、従来のカメラすなわちアナログ・カメラと異なる点はいくつかある。そのうちで重要なのは、被写体を記録する装置として主にCCDという光信号を電気信号に変える集積回路つまりセンサーがあり、写された像はデータとしてカメラ内部のメモリーに蓄えられることであろう。フィルムに相当するこのCCDが、光学レンズの品質と並んでデジカメの性能を決定する二大要素の一つであり、その良し悪しが写真の質を左右する。CCDの画素数が多ければ多いほど細密な画像がえられるし、感度が良ければ色の再現性も向上する。
 たいていのデジカメには2インチ程度の液晶モニターがついていて、撮影中や撮影後に写っているものを見ることができる。アナログ・カメラで撮影したときに困るのは、写した時点で写真の写り具合が分からないことである。手ぶれ、ピンボケ、露出不足に露出オーバーなどのよくある失敗などに加えて、広角や望遠レンズの写り具合、カラーの発色、感度別のフィルムの特性、そして被写体の表情などすぐに結果を確認したい項目は限りなくある。

 写った写真をその場で、特に被写体となった人物と一緒に眺めることができれば、これほど嬉しくまた安心できることはない。デジカメで撮ったイメージを小さなモニターで確認するときに、アナログ・カメラで撮影したときとは異なる安堵感が感じられた。アナログ・カメラでは写真を撮ってもすぐに安心はできない。特に夏などではフィルムはできるだけ早く取り終えて現像に回した方がいいし、特にカラーネガフィルムでは現像所を選ばないと思うような色のイメージがプリントされないことになる。また仕上がったプリントやネガは、特別なプリントを選ばないと時間と共に劣化して変色するのが避けられない。
 これに対して、デジカメの写真はデジタル・データなので基本的な質の変化はない。データの消去が怖ければいくらでもファイルとしてコピーできる。これが安心の大きな理由である。

 写真はプリントしてみるもの、という固定観念はとりあえず捨てた方がいい、というのがデジカメの現在の正しい使い方だろう。

 デジカメの画素数は基本的にコンピューターのディスプレイの解像度に対応している。たとえば、現在もっともポピュラーな35万画素タイプのデジカメはVGA(640x480=307、200ピクセル)に、もはや珍しくなくなった81万画素タイプはXGA(1,024x768=786、432ピクセル)に、さらに現在パソコンの最高の解像度である1、280x1、024(=1、310、720ピクセル)に対しては140万画素のデジカメが対応し、それぞれ対応した解像度で見れば画面いっぱいにイメージを表現できる。
 デジカメのイメージをプリントするときの品質は、プリンターの種類と性能に依存する。いま一番普及しているインクジェット式プリンターのうちでも上位機種の、1440dpiタイプを使って141万画素のイメージを1画素=1ドットの計算で出力した場合、なんと2.26x1.81センチのプリント、つまりプリクラ程度の大きさしか得られないのである。これではあまり小さいので、ふつうはプリンターの解像度を4分の1くらいに落として(つまり出力のドットのサイズを大きくして)出力する。1440dpiプリンターで360dpiにして印刷すると141万画素のイメージで葉書2枚程度、81万画素では葉書程度の大きさのプリントとなる。注)1

 たんにプリントの結果だけを比較したのでは、デジカメはまだまだアナログ・カメラにかなわない。
 しかし撮影したイメージの表現をこうしたハードコピーに限定しなければ、デジカメは圧倒的に有利になる

 たいていのデジカメには映像出力(NTSC方式)の端子があって、簡単にテレビに出力できるのである。VGAの解像度でも、わが家の32インチのテレビで十分に鑑賞に堪える画像が得られた。小さなプリントを順に回してみるよりも楽しいし、印象も強いのである。またマルチメディア教材作成室の授業ではその場で撮った写真をプロジェクターを通して120インチのスクリーンに投影し、クラスの学生を驚かせた。アナログ・カメラで同じことをしようと思えば、撮影したフィルムを現像・プリントしそれを教材提示装置のビデオカメラで写して、プロジェクターから出力しなければならず、かなりの時間と手間がかかってしまう。
 またコンピューターに取り込めば、コントラストやシャープネスそして色の調整などができるほか、文字を加えたり、ワープロ文書に張り付けること、そしてメールと共に送ることもできる。最近ではふつうの写真アルバムのように画像を用意された枠にはめ込んで、一覧で見たり、拡大してみたりする電子アルバムのソフトも市販されている。いずれそのアルバムに音声による解説や、ビデオからのクリップ映像などをつけ加えることもふつうになるだろう。


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