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山梨大学におけるコンピュータ利用の語学教育

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TOEICオンライン学習システムについて(滝口 晴生)

現在約500名が登録しているが、そのうち実際に学習にはいっているのは約80名、さらに学習を続けているのは50名程度、ほんとうに定期的に学習を進めているものはさらに少なくなる。定期的という意味では、授業における使用であるが、たとえば、国際文化講座の英語CALLの授業で利用されているが、毎回というわけではない。このシステムは本来各自が自主的にすすめてゆくものであるので、授業として強制的に学習させるのはシステムの趣旨にそむくことになろう。しかし、授業の中で、ある程度、動機づけをしてやることも必要であるかもしれない。というのも、多くの登録者は登録したのみで、実際には定期的に学習している様子が見うけられない。これは、ひとつには利用場所が限られていることがある。授業で利用場所が使われていたりすると、足が遠のくようである。(不可能ではあるが、自宅のパソコンで学習できたらという希望が確かにある。)したがって授業のなかのひとつの活動で、時々でも学習したり、また授業の中でなくとも、学習した結果が授業に反映するような形にすることが、学習を進めさせる動機づけになるであろう。

学生による使用感は、おおむね好評である。参考書もノートも必要なく、コンピュータの前に坐れば学習できるというのが利点である。とくにリスニングについては、自分にあったスピードで、繰り返し聞け、またさまざまな題材が提供され、とりわけ大統領の演説が実際の音声で聞けるという点は好評である。

問題点は、コンピュータの画面上で、しかもかなり小さい文字を読むことになるので、眼が非常に疲れることである。一回の学習時間はせいぜい30分以内であろう。それ以上は疲れて、気力を失ってしまうようである。またリスニングのスピードが変えられることは利点であるが、しかし場合によっては不自然な音声となってしまうことは問題である。また文法的な解説はほとんどないので、この点を学習したい利用者には不満がある。

英語の学習としては、本やCDともことなり、全般的に使いやすいシステムということである。しかし幾人かの感想では、本当に学力が高まっているのか、どうか自分でわからないという。実際の理解度をためす簡単な練習問題のようなものがついていればその助けとなるであろう。もちろん模擬試験練習があるので、それを行えばある程度は自己の進度がわかるはずであるが、これは20分ほど集中して行わなければならないので、学生にはすこしハードルが高いようである。そういうこともあり模擬試験まで進んでいる利用者はまだ少ない。さらに1年を経て、また実際に試験を受けた結果をみて、このシステムが機能しているかどうかを判断する必要があるだろう。いずれにせよこのシステムで学力をあげてもらうという受身的な利用ではなく、自分はこれをどう利用するかという主体的な利用の仕方が望まれるであろうし、またそうしなければこのシステムも生きてこないであろう。

 


コンピュータ利用によるドイツ語教育(八木 博)

現在コンピュータを用いている授業は、共通教養科目のドイツ語L(中級)と国際文化講座・専門科目ドイツ語CALLI, II, III, IVの5科目である。授業は、90分では足りない程、充実していて、活気に満ち、受講生の満足度は極めて高い。中でも、共通教養のドイツ語L(中級)は受講希望者も多く、受講希望者全員の要望をかなえることが出来ない状態である。

コンピュータを用いての共通教養科目における授業の問題の第一点は、ドイツ語L(中級)を、少なくとも、あと一コマ増設する必要に迫られている。

問題の第二点は、使用しているコンピュータが、幾つか故障していて、使用できない状態にあることである。

国際文化講座の専門科目・ドイツ語CALL I, II, III,IVについては、受講生が主体的にドイツの種々のホームページを通して、情報収集に努め、満足感に溢れて、知識を涵養している。専門科目・ドイツ語CALLの授業は、L114教室を使用しているが、他の学生も一緒に使用している場合も多い。

将来的には、受講生が少ない専門科目の授業のために、国際文化講座の演習室にコンピュータを数台配置する必要があろうと思われる。

授業が,思いの外、時間を要するために、今後、専門科目・ドイツ語CALLに関しては、授業時間を越えて授業が出来るような、例えば4限に開講する等、対策を講じたいと思っている。

 


インターネットを利用したフランス語学習(森田 秀二)

フランス語の講義としては、主題別科目ホに前期・後期それぞれ1コマずつインターネットを利用したフランス語学習の時間を設けている(L1[アルヴェ担当]、W1[森田担当])。これに専門科目のフランス語CALL氈`「を加えるとコンピュータ、特にインターネットを利用したフランス語の授業は6コマに及ぶ。

インターネットを利用した語学学習の可能性についてはここでは詳説しないが(森田「インターネットを利用したフランス語学習の可能性」、平成10年3月 『山梨大学総合情報処理センター研究報告』Vol.1、参照)、語学学習法として次のようなものが考えられる。

1)学習用スタックやデータベースを利用したオンライン学習

2)外国の WWW ホームページを利用した情報収集、リーディング

3)電子メールの同報機能を利用したリーディング・ライティング(教師/対/クラス、学生/対/学生、特定の学生/対/クラス、等々)

4)学生自らのホームページ開設によるライティング学習

本学の授業では主に2)と4)を行っており、そのための参考用ホームページを開いている。

2)4)はそれぞれ受動的リーディング段階、積極的ライティング段階と位置づけることができるが、特に4)に多くの時間を割いている。HP作成の技術的な問題に加え、フランス語の場合、アクセント記号が特殊記号であるため、二重のコンピュータ・リテラシー学習が必要となるが、学生の反応はおおむね良好である。なお、授業のなかで学生が制作したフランス語HPは公開している。

 

 


中国語:パソコンによる中国語情報処理の教育(町田 茂)

現在開講している中国語CALLにおいては、パソコンによる中国語情報処理の方法論(講義)及びその実習が中心である。パソコンによる中国語情報処理では、文字コードが日本語と異なり、しかも、中国語世界でも体系が異なることから、日本語システム上で中国語を処理する場合と、初めから中国現地と同様のシステムを導入する場合それぞれについて、設定、ソフトの組み合わせやインストール方法を講じなければならない。さらに、中国語の文字入力方法はローマ字入力の他、漢字の形からの入力方法も現地では一般的で、結果として多言語処理の基礎知識を習得させるのに授業時間の多くを使わざるを得ない。ネットワーク使用の実践的教育は今後益々重視したいが、昼間中国大陸への接続に予想外に時間を要することがあり、今後の情勢の変化を睨みつつ授業内容を検討していきたい。

 

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