第3章 まとめ


今回の研究において、電子オルガンの機能をどのように音楽的に活かし得るかという事についていくつかの実践例を伴いながら示してきたが、機能の活用の仕方として、それぞれが独立して用いられているだけではなく複数の機能の組み合わせやLower Memory等の自動演奏機能を利用した手法から得られる効果はより新しく、複雑な音響を作り出す事ができると考えられよう。また機能の組み合わせとしては今回示したものの他にシーケンサーとプログラム機能といったものも考えられ、これは今後の課題として十分研究の価値があるだろうと思われる。 更に、電子楽器という特性から音の定位を視野に入れた手法も当然考えられるであろう。現在、ステレオの様な2chにおいてパンフットの効果をつける事ができるが今後 ドルビー5.1ch(※7)SRS(※8) 等の再生技術を利用出来るような環境は強く望まれるのではないだろうか。

無論、今回提示した例は実曲に取り入れられているものもあり歴史的に見て何ら新しいものではない例も含まれているが、現段階においてこのような機能の活用法を体系的にまとめたものが皆無に等しく作曲家の実際の制作において言わば「作曲のための機能活用マニュアル」の必要性が叫ばれている中、こういった研究は日々推し進められていかなければならないと感じている。

歴史的に見ると、電子オルガンはもともと「一人で手軽に疑似オーケストラ、バンドとして演奏する事ができる」という位置付けから始まったにもかかわらず、現在シリアスな音楽のカテゴリーに取り込まれようとしている。つまるところ、作曲家から見た電子オルガンの魅力は自動演奏機能やピッチベンダー、ディレイに始まるアコースティックな楽器等には見られない独特な機能であるが、現時点ではポピュラー音楽を演奏するという視点から付加されたこれらの機能をどのように作曲の観点から捉えるかという事がこの楽器を使おうとする作曲家の課題であろう。

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