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YINS Whois データベースの構築

藤田 孝夫, 山本 陽平, 豊木 博泰

1 は じ め に
2 YINS Whois DB の利用法

3 基 本 構 成 4 Security
5 保 守
6 学生版 Whois DB
7 ま と め
参 考 文 献 及び 注
謝 辞

1 はじめに

Whois システムは, Whois daemon が走り, 個人情報が格納されているホ ストマシンに Unix や PC(パーソナルコンピュータ)上の Whois クライアン トによりアクセスし, メールアドレスを主とした情報を得るサービスであ り, 既に開発されている。本システムは, このシステムを基礎にして, WWW 上及び電子メール等によりサービス出来るよう拡張したものである。 サービスされるデータは [ 氏名, メールアドレス, 所属, 電話及び FAX 番号, 一言コメント]とし,WWW 上での検索結果は, 別に登録された個人の Web ページ もアンカー表示されるようにした。

本論文では, 構築された山梨大学教職員版 Whois DB に関して主に述べているが, 学生版 Whois DB も別に構築し, 活用されている。

2 YINS Whois DB の利用法

本 Whois DB(データベース) は WWW 上のみからだけではなく, 各種方法に よりアクセス可能なよう構成することを試みた。本章では, 各種利用方法を説明する。

2.1 WWW

YINS Whois Gateway ( 日本語 , English ) にアクセスすれば, 利用法は自明であろう。検索において, 語句の入力に ISINDEX を用いているため, lynx ブラウザでは不都合があるようであり, この点 に関し FORM 入力に変える予定でいる。

2.2 Whois client

2.3 Telnet

サーバを www.yamanashi.ac.jp にし, ポートナンバー 43 にアクセス し, 検索したい語句を打込めば応答がある。この場合も提示されるデータ は生である。

   >telnet yu-www 43
   Trying 133.23.194.245...
   Connected to yu-www.ccn.yamanashi.ac.jp.
   Escape character is '^]'.
   fujita
   FUJITA Takao:fujita@grape.kkb:0552-20-8223:0552-20-8223:Edu, Tech 教育学部 技術:TF4 VaporWare:藤田 孝夫
   Connection closed by foreign host.

2.4Gopher

YINS Gopher にて登録者一覧を提示している。但し, データ更新に 即時性はない。また, YINS Whois 関係のテキストベース資料はここに 置くようにしている。

2.5 Mail

現時点ではインターネット利用者の大半は Window 環境を利用していると 考えられるが, 本システム構築時(1995年8月)においては, Window 環境で アクセスしている利用者は少なかった為, メールによる利用にも重点を おいた。メールにより, 検索, 登録, 変更, 削除が可能となっている。又, 管理者用にメールにより本システムアクセス状況も調べられるようになっている。 検索には,

   To: whois@whois.yamanashi.ac.jp
   Subject: get name <key>
にて送信すれば, 結果が返信される。同じアドレスに
   Subject: help
を送信すれば, その 他の利用方法が返信される。

3 基 本 構 成

本システムの構成は (a) Whois daemon の設定, (b) Whois DB ファイル設定, (c) HTML ファイル及びCGI-Bin スクリプトの構成からなっている。

3.1 Whois daemon

本システムでは Whois Daemon として Horton 版 を採用し, 使用 OS としては, 初期には SunOS4.1.2 を, 後に Solaris2.5 に移行した。本ユーティリティ は色々な機能を持つようであるが, ここでは Daemon として生成される in.whoisd のみを用いた。/etc/services, /etc/inetd.conf の設定例は 下記の通りである。ここで, horton は Whois へのメールアクセス に応答するユーザも兼ねている。whois.dat は次に述べる DB ファイルである。

   [ /etc/services ]
   whois           43/tcp

   [ /etc/inetd.conf ]
   whois stream tcp nowait nobody /usr/etc/tcpd /home/horton/in.whoisd /home/horton/whois.dat
3.2 Whois DB ファイルの仕様

DB ファイル whois.dat の仕様としては, passwd ファイルの構成方法 を真似て, 一行一人分(record)とし [ ローマ字表記の名前, メールアドレス, 電話番号, Fax 番号, 所属部局, その他, 及び漢字表記氏名 ] の 7 fields からなる。メールアドレスの yamanashi.ac.jp は自明故省略している。field の区切りには ":" を用いた。 氏名とメールアドレスは必須であり, 他は省略可能である。

Real-name:e-addr:Tel:Fax:Department:misc:Japnese-name
FUJITA Takao:abc@xyz.kkb:0552-12-3456::Edu, Tech:TF4 VaporWare:藤田 孝夫
3.3 URL DB ファイルの仕様

Whois DB と連動して, 登録者の個人 WEB ページをリンクするため, URL DB ファイルも構成されている。仕様は下記のように, メールアドレスと URL の 2 fields からなっている。 Whois 検索時に, このファイル内に 一致するメールアドレスがあればアンカーにてリンクを張るようにしている。

e-addr:URL
fujita@grape.kkb:banana.kll.yamanashi.ac.jp/~fujita/index.html
3.4 HTML ファイル及び CGI-Bin スクリプト

上記 3.1-3.3 をもとに, 表示に関しては HTML を, 入力や 各種処理には sh, perl で記述されたスクリプト及び FORM 入力関係の一部処理には C を用い開発した。

4 Security

本システムの構築においては, 検索は学内外から可能であるが, 登録, 削 除, 変更等は学内 (yamanashi.ac.jp ドメイン)のユーザにのみ可能とな るように工夫しなければならない。又, 本人の同定や登録希望のメールア ドレスの実在性(reachable)の検証も必要となる。本章では用いられた幾つかの方法 を示す。

4.1 同時書込回避

後述するアクセスログから, 本 Whois DB への同時アクセス(主に書込) が生じる確立はほとんどないと思われるが, その場合の対策を次のように 行なっている。

DB ファイルへのアクセス時にファイル名 "ari" という空の一時ファイル が自動的に作成される。ほぼ同時に遅れてアクセスしたユーザは, このファイル があるため, すぐには DB ファイルにアクセス出来ず, それが消えるまで 待たされるようになっている。実際には, DB ファイルへのアクセス時間は 短いため, 一時ファイルは通常すぐ消去され, 待たされるという 感じはないはずである。なんらかの理由により, 消去されないと, 約 1分間後にユーザには Busy メッセージが表示され, 管理者にはメールにて 連絡がいくようになっている。

このような事態は, 管理者が手動で DB ファイルを操作する必要があり, 一時ファイルを作成し, 操作後消去せずにおいた場合に2度生じた だけであり, 通常の運用では今の所起こっていない。

4.2 メールアドレスの妥当性

登録時にタイプミス等により, メールアドレスを間違えた場合 のことを考慮しそれをチェックする必要がある。又, 学外から 試みに登録しようとした場合に登録できない旨のメッセージを 表示する必要がある。

この対策として, 本システムでは mail-expand というユーティリティ を利用させてもらっている。利用法は

   mail-expand <mail-address>
にて行ない, 実在するアドレスならば, Reachable という意味で, 行頭に R> という記号をもって1行が返され, 判定基準になる。

   >mexp ftaka@www.yamanashi.ac.jp
   R> FUJITA Takao <fujita@kkb.yamanashi.ac.jp>
学外からのアクセスチェックは httpd が返す環境変数をみて, yamanashi.ac.jp ドメインか否かを判定している。但し, 学内の Proxy サーバを経由した場合, 学内とみなされるため, Proxy サーバ経由の場合はそれをはずすようメッセージを 表示する工夫をしてある。

4.3 データ消去

データ消去に関してはより安全性が必要とされると考える。データ消去 希望者が本人であるか確認する手立てに悩んだ部分である。この方法として, メールサーバのユーザのホームディレクトリ上に .profile という ファイルを置いてもらい, そこに whois-delete という文字列を書込んで もらう。finger にてこのファイルの内容が入手される為, 本人同定が 可能となる。

4.4 URL の登録

既に Whois DB に登録してあるユーザの Web ページの URL 登録に おいても, 前記の finger と .profile ファイルを利用して 個人の同定を行なっている。

4.5 Mail 送信

Whois DB の検索結果において, メールアドレスが取り出され表示されるた め, このアドレスをクリックすればメールユーティリティがポップアップ し, それによりメールを送信するようにすることは容易である。しかしな がら, WWW 上からメールを出す時, 設定によっては投稿者を偽ることがで きることが判明したため, 便利ではあり要望もあるが, このような措置は 採用していない。

5 保 守

本システムはほぼ自動化されているため, 管理者が特に保守を する必要はない。週一度メールで 簡単なアクセス状況を知らせて くるようにしてある。これをみることによって, 稼働状況が 把握できるようになっている。ほぼ 20-30 アクセス/日 の利用度になっている。 稼働開始からの累積統計の例を Gopher にて示してある。但し, 学内, 日本, 国外からのアクセス別にデータを 取るよう改善の余地がある。

[ on Feb. 9, 1998 , 6:00 ]
whois.dat   is updated on Feb 3 19:23  (最新データ更新日)
Access Count = 16368 times             (アクセス回数) 
Data   Count = 298 users  (whois.dat)  (登録者数)
本データは単にページを開いただけではカウントせず, 実際に検索, 登録等を行なった場合を記録している。

6 学生版 Whois DB

1995年度より, 山梨大学の全学生, 院生, 研究生等には本学総合情報処理セ ンターにおいて同一マシン上で電子メールアドレスが配布され使用できる 体制になっている。また, 各自の home ディレクトリ上に個人 WEB ページ も構築でき, 学外からもアクセス可能となっている。

このシステムを利用し, 教職員版 Whois DB とは別に 学生版 Whois DBの 構築を行ない(1996年7月), 登録希望者は利用可能となっている。特に, 検索時において, 登録者が個人 WEB ページを開設していた場合には, 自動 的に検出しリンク先をアンカー表示するようになっている。

昨今, 就職活動のみに留まらず, 学生の(インターネット上での)情報発信活動 や自己表現が求められている時世であり, 有効利用が期待される。 学生版 Whois DB の登録者は, 1998年1月の時点でほぼ 100 名(全学生数 はほぼ 4 千名)である。本システムには 25 アクセス/日 で利用されている。 詳細に関しては 別レポートを参照されたい。

7 ま と め

YINS Whois システムは 1995 年 8 月に構築され, 試験運用の後, 同年9 月 1 日から正式運用されてきた。1997 年 8 月下旬に落雷の影響により サーバが停止したほぼ 3 カ月間(その間代替機で運用)を除き稼働してい る。現在, 山梨大学教育学部附属学校園も含め 500 人近い教職員のうち, ほぼ 300 人の方が登録している。 本学のように規模の小さな組織では, 組織ごとに DB ファイルを分割せず とも十分対応できるている。

現在稼働しているシステムは, メールアドレスの検索を目的としたもので あるが, 個人 Web ページへのリンクも可能とした。今後, 教官の研究分野, 活動等の諸情報とも連動できるようにしていきたい。

参 考 文 献 及び 注

  1. 例えば : Allied Telesis, AT-TCP/32(V1.0) User's Manual, pp.170-173,1996.
  2. Dan Kegel, Horton Whois, horton.1.8.shar, 1992.
  3. (株)東芝 研究開発センター 情報・通信システム研究所 第一研究所, sendmail の宛先名展開コマンド(mail-expand) β.1, 1993.
  4. YINS=Yamanashi-university Internet Network System.
  5. yu-www.ccn.yamanashi.ac.jp, www.yamanashi.ac.jp, whois.yamanashi.ac.jp は同一サーバである。

謝 辞

山梨大学のインターネット上の諸々をまとめようという目的で, 1995 年 に本学情報処理センターを中心として, 教職員及び学生の有志が集まり通 称 yuinfo というグループが構成された。本 Whois DBもその一貫として, 構築されたものである。アイデア, 動作チェックなどはこのグループ及び 情報処理センター員の皆様方に負う所大であり, ここに改めて謝意を表し ます。