千屋96関係者へ

千屋断層国指定天然記念物の経緯

               (写真はクリックすると大きくなります)

  千屋断層は,明治29年8月31日陸羽地震で生じた地震断層です。日本では明治
 以降,地震断層は全国で十数例知られていますが,その中で千屋断層は,深溝断層
 (1945年三河地震の地震断層)とともに,数少ない逆断層タイプの地震の例であ
 ります。

  昭和51年12月,村(当時,秋田県仙北郡千畑村)の天然記念物に指定され,昭
 和59年3月には秋田県の天然記念物に指定されております。そして平成3年4月
 12日,国の文化財保護審議委員会が,井上裕文相に国の天然記念物に指定するよう
 答申しております。これを受けて,町(千畑町)と県では,平成4年度により,国
 の指定・土地公有化のため,県文化課の指導・指示のもとに書類を整備し,対処し
 てきました。

  これまで千屋断層の調査につきましては,明治29年以降・大正・昭和・平成と断
 続的に行われています。昭和57年には東京大学地震研究所を中心に調査団を構成し,
 断層発掘調査を行っています。その後も,昭和61年に花岡地区トレンチ調査,62年
 に一丈木南地区ボーリング調査,63年に一丈木南地区トレンチ調査,平成元年に中
 小森地区ボーリング調査が行われています。そして平成2年に,文化庁(桂技官)
 より,現地視察が行われました。

  保護保存につきましては,埋め戻しが最適だと言われていますが,断層研究者のた
 め,中小森地区のトレンチに”さや”をかけて保護しています。しかし,上部からの
 浸透水や冬期間の氷結のため,表層面の崩壊があり,これを防ぐため,これまで調査
 のため来町しました東京大学地震研究所(現在熊本大学)松田教授,山梨大学今泉教
 授,東北大学平野助教授らにご指導を仰ぎましたが決め手がなく,昨年10月,試験的
 にトレンチの壁面に固定剤(シーカデュ52)を吹き付けました。しかし,越冬後には
 やはり剥離が見られ,このため,研究見学のある場合は事前にトレンチ内の土砂を取
 りのぞく等の整備をしております。また,年数回一般の見学者のためにトレンチのさ
 やの周囲の草刈り等に配意しています。今後,指定・公有化に伴い「環境整備審議会」
 を作り本格的に保護保存・整備に努めてまいりたいと思っているところであります。

  平成8年は,地震発生から100年に当たります。平成3年度に,教育委員研修会とし
 て,教育委員と委員会事務局職員が1891(明治24)年に濃尾地震を起こした岐阜県の
 根尾谷断層と,1930(昭和5)年北伊豆地震を起こした静岡県の丹那断層(共に国の
 特別天然記念物)の保存現場を訪問しております。今後,更に色々な面の情報を収集し
 て,よりよい保存方法に対処してまいりたいと思っております。

                (秋田県仙北郡千畑町教育委員会内資料にもとづく)