総合情報処理センターの新システムについて

伊藤 洋(総合情報処理センター長)

豊木博泰(システム管理室長)

吉川雅修(研究開発室長)

藤田孝夫(センター員)

美濃英俊(センター員)

北村敏也(センター員)

鈴木智博(センター員)


1 はじめに

 山梨大学総合情報処理センターは,1982年度に学内共同利用施設「情報処理センター」として設置されて以来,学内の情報処理の中枢組織として学術研究・情報処理教育の向上に寄与してきた.そして,1997年4月1日をもって文部省令施設「総合情報処理センター」に昇格した.

 山梨大学は,ここ数年,組織面では大学院工学研究科博士課程・教育学研究科修士課程の設置,地域共同開発研究センター・機器分析センターの設置,大学改革に伴う学部改革・新学科設置など相次いで改革・整備・拡充が行われ,研究面では学際的・先端的研究を充実させてきた.また,教育面では情報リテラシー教育はいうに及ばず,VOD(Video On Demand)やインターネットなどマルチメディアを駆使した大学教育の充実に向けた取り組みが開始されている.これら一連の変化によって,いまや総合情報処理センターの情報システムは,必須のキャンパスインフラストラクチャとして位置づけられている.

 センターシステムには,発足時から全教職員が何らかの形でユーザーとして参加していたが,1995年頭初からは,教職員はもちろん,4,500人の全学生にアカウントを供与し,学内はもとよりPPPダイアルアップ接続によって学外からもYINS(Yamanashi-univ Information Network System 山梨大学情報ネットワークシステム)へのアクセスを可能にしてきた.これによってYINSのトラフィック量は飛躍的に増加し,その利用形態も高度化・多様化した.こういう変化を一層促進するために,センターではネットワーク環境の整備を中心とした情報環境の高度化を推進し,1996年にはFDDI 100Mbps 4ループに加えて620Mbpsの基幹網,155Mbpsの支線網を有するATMネットワークをキャンパス全域に配備した.さらに,1998年にはPIAFSによるPHS無線LANを構築して有線網ではカバーできない屋外等キャンパス内の全域ネットワーク化にも着手した.この結果,ダイアルアップ接続も含めると,現在2,000台を越える端末がYINSに接続されている.

 一方,1997年には情報コンテンツのマルチメディア化を推進するためにVODシステムの構築,附属図書館と提携して電子図書の配信サービスを開始するなど,マルチメディア化・高速化・国際化・多様化への取り組みを一段と強化してきた.また,地域社会とのネットワーク接続を充実するために,地域内学術情報ネットワークの強化にも注力してきたが,加えて1997年からは民間網との接続にも着手し,山梨地域インターネットワーク接続機構(YNIX)を設立して,本センターはそのノード機能を果たしている.これによって,我が国で初めて「官学民」一体の地域インターネット接続システムができあがり,ネットワークの効率化・安全性・経済性・利便性に寄与している.

 高度情報社会の発展を支える先端科学技術の開発,次代を担う高度な研究者・技術者・教員の養成,ネットワークとマルチメディア技術を駆使した学術情報の世界へ向けての発信,電子図書館の構築,事務量の増大に対処するための学内事務のイントラネット化等々,総合情報処理センターに課せられた時代的役割ははかり知れない.これらの要請に応えるために,情報処理基盤の更なる整備・充実が喫緊の課題となってきた.そこで,総合情報処理センターへの昇格を機に,センターシステムのすべてを更新することとし,1998年2月3日をもって,新システムに移行した.本論文は,山梨大学新「情報システム」の概括的な説明である.

2 システムの全体像

 1998年2月山梨大学総合情報処理センターに導入された主たる新システムは,次のとおりである.

 以下,これら各システムについての性能及びアプリケーションについて概括的に説明する.(システム全体図はここをクリック)

2.1 研究用アプリケーション・ファイルサーバシステム(YINS-Labo) Shingen

 Silicon Graphics Cray社製Origin 2000

 新システムの中核をなすサーバである.全学の学生,教職員からなる4,500余名のユーザに総容量600GBのディスクスペースを提供するとともに,豊富なアプリケーションソフトウェアによって幅広い分野の先端的研究をサポートする.

 ハードウェア構成としてはMIPS R10000(195MHz)プロセッサ16台からなる並列マシンで,総メモリは4GBである.総容量600GBに及ぶ磁気ディスクは全て信頼性,性能に優れたRAID5で構成されている.また学内ネットワークとの接続はATM基幹網直結,総通信帯域310Mbpsとなっており,全学からのオンラインネットワーク利用に十分応えられる体制を取っている.

 本サーバ上の充実したアプリケーションソフトウェア群は新システムの目玉のひとつでもある.計算エンジンに高品質なビジュアリゼーション機能とグラフィカルインターフェイスを統合した高機能アプリケーションを多数備える.以下にその一覧を示す.

YINS-Labo Shingen

2.2 ベクトル計算サーバシステム(YINS-Comp) Kizan

 NEC社製SX-4B/2A

 最大演算性能3.6GFLOPSの超高速ベクトル計算機であり,ベクトル演算主体のユーザプログラムの高速実行を任務とする.ベクトル化,並列化を支援する各種コンパイラ(Fortran77,Fortran90,C,C++)を備えるとともに,旧来のシステムACOS,UP48上で利用されていたライブラリーの互換品が提供され,学内ユーザの持つ過去のソフトウェア資源の移行が容易となっている.本機の主記憶容量は2GB,ユーザのディスク領域は「2.1 アプリケーション・ファイルサーバ(YINS-Labo) Shingen」と共有される.

 本サーバの設置によって,これまで東京大学大型計算機センターなどのベクトル計算機に頼っていた処理も,学内で効率良く処理することが可能となる.ユーザの経済的負担が減り,使い勝手が格段に向上するものと思われる.

 なお,本機は,NEC社スーパーコンピュータSXシリーズの記念すべき100号機であり,特別にゴールドプレートが付けられている.

2.3 デジタルメディアコラボレーションラボシステム(YINS-DMCL)

 デジタルメディアコラボレーションシステム(以下YINS-DMCLと略称する)は,YINS-LaboYINS-Compにより得られる科学技術計算結果を高速かつ高品質に視覚化することを目的とする.また各種の周辺機器により,視覚化した結果をYINS-MODのリソースとして提供すること,およびマルチメディアプレゼンテーションの作成を支援することが可能である.

YINS-DMCL Octane

2.3.1 ハードウェア(SGIOCTANE/MXI

2.3.2 ソフトウェア

2.3.3 周辺機器

2.3.4 ネットワーク

 YINS-DMCLのOCTANEは2つのネットワークインターフェイスを持ち,それぞれ学内ネットワークとYINS-Laboに接続している.

2.3.5 科学技術計算結果の可視化機能

 可視化支援ソフトウェアAVSにより,科学技術計算結果,数値シミュレーション結果を視覚化することが可能である.AVSには以下のような特徴がある.

2.3.6 ノンリニアビデオ編集

 JALEO IMPACTとディスクレコーダ(Accom WSD/Xtreme)によりテレビ,映画品質のCGアニメーションを高速に作成/編集することが可能である.また,これをDVCAMビデオデッキ(SONY DSR-85),またはS-VHSビデオデッキ(SONY SV0-5800)に記録することが可能である.

2.3.7 マルチメディアプレゼンテーション作成支援

 メルチメディアプレゼンテーションのコンテンツ作成支援のために以下の周辺機器を備える.

2.4 マルチメディアオンディマンド情報システム(YINS-MOD)

 本MOD(Multimedia On Demand)システムは,教育研究支援・学内広報・学術情報発信等を目的としたマルチメディアコンテンツをTCP/IPプロトコル上で学内外にサービスするためのマルチメディアサーバ/クライアントシステムであり,本学附属図書館所蔵の電子図書の閲覧・マルチメディア共同視聴・電子図書の製作および配信のための設備からなっている.

2.4.1 MODサーバ

 MPEG1形式の動画データをIPプロトコルにより最大24クライアントに対し同時配信できるシステムである.サーバ機はNEC Express5800/150Proであり,データ格納領域は25.8GBである.また,155Mbps MMFのATM-NICを装備し,学内ATM基幹網に直接接続されている.サーバソフトはNEC製HYPER MS-Liteである.クライアントソフトはWindows97およびWindowsNT上で動作するものが用意されており,学内のコンピュータに対してはコピーフリーとなっている.

2.4.2 CD-ROMサーバ

 辞書,事典データ,その他図書館所蔵のCD-ROMデータを学内向けに提供するサーバである.Express5800/160ProにCD-ROMドライブ7台を装着し,100BASE-TXにてネットワークに接続している.サーバおよびクライアントソフトは「ネットワークこととい」である.すでに,『広辞苑』,『ニューセンチュリー』・『クラウン』などの諸辞典,『日本文化総合年表』,『現代用語の基礎知識』などがサービスに供されている.今後,これらのコンテンツについては随時増強していく計画である.

2.4.3 マルチメディア閲覧室

 附属図書館の一室に,マルチメディアパソコンExpress5800/53(ディスプレイは14インチ液晶型),書画カメラ,VTRおよび液晶プロジェクタViewLight S810などが設置され,マルチメディアデータを60インチ偏向スクリーンに投影できるようになっている.マルチメディアを活用した会議,セミナー等に利用できるよう室内のレイアウトも考えられている.

2.4.4 図書館キオスク端末

 附属図書館内にExpress5800/53パソコン20台(既存のYINS端末10台を加えると合計30台となる)が配置され,ネットワークに接続されているほか,イメージスキャナ3台が接続されている.図書館で通常のネットワーク情報検索,送受信などの利用や,電子メモをとりながらの学習,レポート作成,スキャナによる印刷物と電子媒体上のデータとの相互変換などに利用することが想定されている.

 その他,図書館デジタル資料作成・提供サーバとしてEWS4800/470およびその周辺装置(DAT,スキャナ,MO,CD-ROMなど)が設置されている.

2.5 情報処理教育用システム(YINS-Edu)

 近年急速に進む社会の情報化・ネットワーク化にしたがい,大学における情報処理教育への要求は質・量ともに高まっている.このような要求から,情報処理教育用システムにおいても,情報処理教室の整備,アプリケーションの拡充,処理速度・ネットワークの高速化と大きく拡充されている.また本システムは,単に情報処理教育のためのシステムと捉えるのではなく,学生の自発的な学習,情報の取得,情報発信,専門的研究といった学生の情報活動の中心地となりうるシステムを目指した.

2.5.1 教室構成

 情報処理教育用教室は,総合情報処理センターとなり従来の2教室から,基礎情報処理教室第一・基礎情報処理教室第二・エンジニアリング情報処理教室・マルチメディア情報処理教室の4教室へと拡充された.各教室は,リテラシー教育から工学専門教育,情報コンテンツの作成といった目的別に特色を持たせた教室構成となっている.また,各教室の端末には,学生にとって馴染みやすいWindows NT Workstation と,計算処理やプログラミングのためにPC UNIXのふたつのオペレーティングシステムを搭載し(マルチメディア情報処理教室はWindows NT Workstationのみ),十分とはいえないものの情報処理教育に必要と思われる各種アプリケーションを備えている.

2.5.1.1 基礎情報処理教室第一・第二

 基礎情報処理教室の端末(合計100台)は,Windows NT Workstationと,PC UNIXのSolaris for X86のダブルOSになっている.Windows NT Workstationでは,端末の使用方法に始まり,ワープロ,表計算等のリテラシー教育,電子メール,ネットニュース,WWW等のネットワーク利用,簡単なプログラミングなどに供する.Solarisは,UNIXの使用法から,ネットワーク利用,C,FORTRAN等によるプログラミング,TeX,LaTeXによるドキュメントの作成の実習を目的としている.

YINS-Edu 学生用端末

2.5.1.2 エンジニアリング情報処理教室

 エンジニアリング情報処理教室の端末70台も,Windows NT WorkstationとPC UNIXであるSolaris for X86のダブルOSになっている.Window NT Workstationには,ワープロ,表計算といった一般的ソフトウェアに加え,機械系CAD,土木系CAD,電子電気系CAD,化学系分子構造シミュレーションソフト等もインストールされており,情報処理の入門教育から,技術系専門教育を担う.

2.5.1.3 マルチメディア情報処理教室

 マルチメディア情報処理教室の端末は,Windows NT Workstation 30台で構成されている.各端末には小型カメラとヘッドセットを備え,動画や音声を使用したマルチメディアコンテンツの作成やネットワーク会議の実習を行うことができる.教室端末は,一つのOSとしたことで,動画編集に充分なディスクスペースを確保している.

表 各教室の端末数とアプリケーション(*端末数には,各教室に教師用端末1台を含む)

教室名

端末数*

アプリケーション

その他

情報処理教室第一

61

Windows NT Workstation

Microsoft Office

(Microsoft Word, Excel, Power Point, Access)

Visual BASIC

Java Work Shop

Netscape Communicator

Win Biff

Keyboard Master

Mathematica

教室設備

A3プリンタ 8台

液晶プロジェクター

100型スクリーン

卓上教材提示装置

SVHSビデオデッキ

拡声装置

A4イメージスキャナ

CD-Rドライブ

Solaris for x86

GNU gcc, g++, g77

JTeX, xdvi, dvi2ps

Mule

Ghostscript

Netscape Navigator

情報処理教室第二

41

Windows NT Workstation

Microsoft Office

(Microsoft Word, Excel, Power Point, Access)

Visual BASIC

Java Work Shop

Netscape Communicator

Win Biff

Keyboard Master

Mathematica

教室設備

A3プリンタ 5台

液晶プロジェクタ

60型スクリーン

卓上教材提示装置

SVHSビデオデッキ

拡声装置

A4イメージスキャナ

CD-Rドライブ

Solaris for x86

GNU gcc, g++, g77

JTeX, xdvi, dvi2ps

Mule

Ghostscript

Netscape Navigator

エンジニアリング情報処理教室

71

Windows NT Workstation

Microsoft Office

(Microsoft Word, Excel, Power Point, Access)

Java Work Shop

Netscape Communicator

Win Biff

Keyboard Master

Mathematica

ME10

Auto CAD LT

Pspice

Chem3D

教室設備

A3プリンタ 9台

A4 PSカラープリンタ1台

A1大型カラープロッタ1台

液晶プロジェクタ

100型スクリーン

卓上教材提示装置

SVHSビデオデッキ

拡声装置

A4イメージスキャナ

CD-Rドライブ

Solaris for x86

GNU gcc, g++, g77

JTeX, xdvi, dvi2ps

Mule

Ghostscript

Netscape Navigator

マルチメディア情報処理教室

31

Windows NT Workstation

Microsoft Office

(Microsoft Word, Excel, Power Point, Access)

Java Work Shop

Netscape Communicator

Win Biff

Keyboard Master

Mathematica

Premiere

CU-SeeMe

端末設備

小型カメラヘッドセット

 

教室設備

A3プリンタ 9台

A4 PSカラープリンタ1台

液晶プロジェクタ

60型スクリーン

卓上教材提示装置

SVHSビデオデッキ

拡声装置

A4イメージスキャナ

CD-Rドライブ

2.5.2 教室端末

 教室端末は,不特定多数の学生・教職員の利用を考慮し,安定性を最重点に置き,オフィスワークステーションモデルとした.これにより,Windows NT Workstationにおいては電源スイッチオフで自動的にシャットダウンし電源オフするようになり,旧情報処理教室端末で頻繁に発生したシャットダウンを行わず電源オフすることによるシステムクラッシュを防止している(たがし,Solaris使用時には,ユーザによるシャットダウンが必要).

 各端末は,VOD等のマルチメディアに十分対応できるよう,100BASE-TXインターフェイスによりATMネットワーク網に接続されている.この高速ネットワークを利用し,Windows NT Workstation,Solaris共に,各個人のIDでログインする事により,サーバー上の各自のディレクトリに自動的に接続し,どの端末からでも個人の環境を復元することができる.

 様々なアプリケーションの高度化による文書・ファイルの肥大化,画像・音声・動画といったマルチメディアコンテンツの情報量の増大により,従来のフロッピーディスクによるバックアップやデータの持ち運びが困難となってきている.そこで,各端末に大容量リムーバブル補助記憶装置として230MB MOドライブを備えた.なお,Windows NT Workstationでは,MOメディアのフォーマットはできないので,あらかじめDOS/V用としてフォーマットされたメディアを利用しなければならない.

 エンジニアリング情報処理教室とマルチメディア情報処理教室の教室端末の本体は,机下の足横に置き,机上には,モニター,キーボード,マウスのみが置かれ(マルチメディア情報処理教室では,小型カメラ,ヘッドセットも),モニターは17型と大型にも関わらず机上スペースを広く取れるようにしている.

 マルチメディア情報処理教室端末には,他の実習者に迷惑をかけず音声情報を含むマルチメディアコンテンツの作成や視聴ができるよう,ヘッドセットを備えている.

YINS-Edu 教室端末本体

(上からMOドライブ,CD-ROM,フロッピーディスクドライブ)

     表 教室端末のハードウェア仕様

CPU

Pentium II 233MHz 1プロセッサ

キャッシュメモリ

1次 32kB,2次 512kB

メモリ

64MB

ハードディスク

2GB + 2GB

 基礎情報処理教室第一,第二,エンジニアリング情報処理教室では,Windows NT Workstation に 2GB,Solaris に 2GB に利用

 マルチメディア情報処理教室ではすべてをWindows NT Workstation で利用

フロッピーディスク

1ドライブ 720kB, 1.2MB, 1.4MB 対応

CD-ROM

1ドライブ 16倍速

MO

1ドライブ 230MB

ビデオボード

Millenium(基礎情報処理教室第一,第二,エンジニアリング情報処理教室)

Mega3(マルチメディア情報処理教室,ビデオ入力端子を備える)

オーディオ機能

Sound Blaster互換

ネットワーク

100BASE-TX/10BASE-T

モニタ

17インチ

マウス

3ボタン

その他

マルチメディア情報処理教室には,小型カメラ,ヘッドセットを備える

2.5.3 教室設備

 各教室には,VHSのビデオデッキ,教材提示装置(卓上小型カメラ)が備え付けられており,ビデオ教材や書籍・印刷物といった教材を教師用端末の画面と共に液晶プロジェクタにより大型スクリーンに映し出すことができる.大型スクリーンの大きさは,基礎情報処理教室第一とエンジニアリング情報処理教室が100インチ,基礎情報処理教室第二とマルチメディア情報処理教室が60インチとなっている.

 情報処理教室では教室端末の操作音やファン音,空調音により教官の声が通りにくくなるため,すべての情報処理教室に拡声装置を備えている.教官用端末には,A4イメージスキャナを備え,画像のコンピュータの取り込みができるようになっている.また,CD-Rドライブを備え,資料や重要なデータをCD-ROMに保存することができる.

 基礎情報処理教室第二,エンジニアリング情報処理教室,マルチメディア情報処理教室の教室入り口には,入退室管理装置が設置されており,各ユーザは総合情報処理センター発行のIDカードにより教室に入室可能となる.また,各教室には監視カメラを備え,総合情報処理センター事務室でモニターすることでセキュリティを高めている.

表 情報処理教室のセキュリティ

個人IDによる端末利用

IDカードによる入退室管理

監視カメラによる教室モニターリング

データベースによる個人情報の管理

2.5.4 教室用サーバ

 情報処理教室の各教室端末は,Windows NTサーバとUNIXサーバの2種類のサーバによってバックアップされている.

 Windows NTサーバは,Windows NTにおけるユーザ管理とプリント管理のサービスとマイクロソフトネットワークのCCNドメインの管理を行う.

 UNIXサーバは,SolarisへのNIS,NFSによるユーザ情報およびユーザのディスクスペースの提供,Windows NTへSMBによるユーザのディスクスペースの提供,Solaris,Windows NTにDNS,SMTP,POP,IMAP等のネットワークサービスを提供する.また,ユーザのディレクトリからは,HTTPによるホームページ開示サービスを行う.

 なお,UNIXサーバは,アプリケーションサーバYINS-Laboと兼用となっている.しかし,ディスクスペースは教育用分として300GBを独立にパーティションを切って用意している.

2.6 インターネット系サーバシステム(YINS-Internet)

 YINSユーザにとって,インターネットの対外的な玄関口として今後ますます重要になるニュース・DNS・WWW・Eメイル等のサーバ群の更新,強化,高速化及び各種サービス開発を目的とし構築されている.

2.6.1 ニュースサーバ

 既存の1台でのニュース配送システムを改良し,3台で対応する.

と目的別とする.これにより,授業,講習会での一斉アクセス時に,研究ユーザへの不都合や接続組織への配送遅延は解消されると考える.

 主な仕様は次のとおりである.

2.6.2 DNSサーバ

 yu-name.yamanashi.ac.jpは本学ドメインのプライマリサーバとして,および本学とネットワーク接続しているドメインのセカンダリサーバとしての情報を保持する.ns.ccn.yamanashi.ac.jpは,総合情報処理センターのドメインccnのプライマリサーバとして,および学内における本学のセカンダリサーバとして機能する.サブネット自前のサーバを所有していず,DNSサーバに登録されていないホストはインターネット上では不都合が生じる.そのようなサブネットはこのサーバに登録も可能であるゆえ,本センターに申請してほしい.

 本サーバはTimeサーバとして,NTP Stratum 2(精度のよい時 計機能をもったマシンからNTPにより時間を得る.)の精度にて標準時間サービスも提供し,各種クライアントから参照可能となる.

 主な仕様は次のとおりである.

2.6.3 WWWサーバ

 マルチメディア化,高速大容量化に対応するべく,WWW関連の整備を行う.本サーバは主に以下の役目を担う.

 WWWサーバの主な仕様は次のとおりである.

2.6.4 メイルサーバ

 mail.yamanashi.ac.jpは教職員及び研究者用のメイルサーバとして,既存のメイルサーバを更新するものである.yamanashi.ac.jpドメインのメイル運用を全般的にサポートする機能も持つ.POP3のほかIMAP4にも対応予定であり,今後開発されていくであろう各種メイラーに対応可能である.

 各サブネットごとに独自にメイルサーバを利用している場合であっても,非常時の備えとして,本サーバに登録することを奨める.

 主な仕様は以下のとおりである.

2.7 事務処理支援用サーバシステム(YINS-Intranet)

 事務部門の情報化を支援するために導入されている.業務の性質上,Fire Wallによってセキュリティを確保している.その中で,Webサーバ/ブラウザの機能を用いたイントラネット情報伝達の機能を持たせてある.

 システム内部では,各種文書処理や業務記録を保存あるいは検索する機能や,事務用に導入されていくパソコンを管理する機能を有する.

 主要な構成要素は次のようになっている.

2.8 ネットワークプリンタシステム(YINS-Printer)

 センター2階にレーザプリンタLaserPress4160II(Fuji Xerox社製)を設置する.これは,研究用ユーザが計算結果,ドキュメントや図表作成ツールの利用結果を出力するための設備である.

 ネットワークプリンタとして,YINS-Labo,YINS-Comp,YINS-Internet,YINS-Monitor等の各ホスト群から出力することが可能である.

 Postscript Level 2に対応しており,600dpiの解像度で毎分20枚(A4)の出力を行なう.

2.9 ネットワーク管理支援システム(YINS-Monitor)

 学内のネットワークのうち,センター内のネットワーク・学内基幹ネットワーク・対外接続用のセグメントが健全に利用可能な状態であるか,また,実態としてどの程度利用されているのか等を把握するためのシステムである.

2.9.1 ネットワークモニタ

 既設のシステムATMVIEW(NEC社製)によって,稼働状況の定常的な観測を行なう.時間/日/月といった単位でトラフィックを計測集計して利用状況のデータを作成することができる.

 学内相互の通信,対外接続回線との通信などネットワークのトポロジーに対応して情報を整理し,利用状況の把握を行なうことができる.また,過負化状態や不正アドレスホストの接続検出などYINSのセキュリティ管理を担当する.

2.9.2 LANアナライザ

 ATM Sniffer(東洋テクニカ社製)を導入する.ネットワーク局所の実時間的なデータ取得を行ない,主として障害発生時にその場所の特定や原因の解析などを行なうために用いられる.http,nfs,ftp,nntpなど,プロトコル種別を識別した情報や,パケットのソースあるいはデスティネーションアドレスに関する情報などを収集する.センターおよび学内のネットワークには,ATM,FDDIそしてEthetnetと複数の種類の形態が含まれているが,これら全てに対応している.

3 おわりに

 以上のように,山梨大学の情報処理システムは,高速ネットワーク環境に適応したシステムとして一新された.各システムのアーキテクチャなど要素的には,世界のコンピュータ技術の粋を集めたものとなっている.ここでの一貫したコンセプトは,

であった.

 今後,本システムを活用した活発な研究活動,高等教育の革新,対外開放,国際化・学際化などの飛躍的な発展を期待したい.

 最後に本システム導入にあたってご援助賜った文部省,および山梨大学会計課,施設課,および日本電気(株)に対して深甚の謝意を表する.システム導入に並々ならぬ役割を果たしてきた本センター員,センター職員安藤英俊助教授・廣嶋くに代技官・網倉和雄事務官・小林睦美非常勤職員,システム仕様書策定委員会委員の皆さんにも併せて感謝申し上げる.