写真解説

1930年北伊豆地震で出現した丹那地震断層の断面

 静岡県函南町畑・乙越地区には,1930年11月北伊豆地震(マグニチュード:7.3)で生じた
2.6mに及ぶ左ずれ地表変位の痕が,国指定の天然記念物「丹那断層」として保存されている.
1996年函南町,国指定およびその周辺の整備事業に着手し,同年12月には丹那断層地下観察室
を設置するため,国指定地の北隣りに一つのトレンチを掘削した.この写真は,掘り上がったト
レンチとその背後に保存される1930年地表地震断層を,北側から見たものである.更新世火山
として知られる多賀火山の崩壊堆積物を鋭く切断する新鮮でほぼ垂直な断層が,地表地震断層の
延長上に現れている.1930年地表地震断層は,天然記念物指定地内では南北に真っ直ぐである
ので,そのまま北にのび,丹那盆地中央に位置する小丘・川口の森の西縁に至るものと思われて
きた.しかし,トレンチに現れたその続きは,急に方向を転じて北東に向かっている.1930年
地表地震断層は,天然記念物指定地北側付近で一端途切れ,左手雁行するものと考えられる(詳
しくは本誌p.19〜27を参照).
                [1996年12月撮影/解説:東郷正美(法政大学)]

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