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わたしたちは目に見える世界で経済行為を行っている。しかし、電子情報化の流れの中で、それとはまったく次元の違った世界が登場し、そして拡大することによって経済あるいは日常生活に大きな影響を受けることが予想される。近い将来、わたしたちは、そのように目に見えない電子的世界における行為を無視できなくなるだろう。実際に、電子ブック、電子新聞、電子メール、電子会議室、電子掲示板、電子図書館、電子投票、電子印鑑、電子署名、電子船荷証券、電子保険証書、電子小切手、電子商取引、電子決済、そしてまたサイバーマーケットやサイバーモールなどなど実に多くの用語が登場している。これらは、従来、物理的な現実の世界で行われていた物、行為、空間が次々と電子情報化され、電子情報空間が広がっていることを意味している。また最近、NTTは、コミュニケーションを不可欠とする人間の仕事を電子化する「電子秘書」の開発を手掛け、その実用化に向けて研究を進めている。 わが国では、コンピュータが、銀行や企業に導入・運用されることによってEDI,EFTなどを始めとした金融・産業の情報化が最初に実現してきた。さらにそれよりも遅れて一般家庭や学校、病院などにパソコンなどが広く普及することにより、ますます社会的に情報化が進展してきている。また、インターネットの普及はクローズドからオープンなシステムの中での商取引を拡大させ、不特定多数の人がネットワーク上で取引することを可能とした。しかし、そうした取引が増加してきているにもかかわらず、取引の完結をもたらす決済に関しては、現在の決済システムが利用されている。今後、とくに仮想空間での取引が拡大していくためにも従来とは違った新しい決済手段あるいは決済システムが必要とされているのである。このように、電子マネーは、インターネット上での電子商取引を加速要因として、より大きな電子情報化の流れの中で進展しようとしているのである。 本稿では、そのような背景を持つ電子マネーについて、まず最初に電子マネーの概念と類型を述べた上で主な電子マネーを概観し、その後で電子マネーの本質と今後について述べていく。 |