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対談

マルチメディアと図書館

宮澤長雄  聞き手 並木信明





 Q1:マルチメディアを今回テーマにした理由は?
 Q2:マルチメディアと高等教育の関わりは?
 Q3:山梨大学附属図書館のマルチメディアの取り組みは?
 Q4:マルチメディアオンディマンド情報システムとは?
 Q5:附属図書館のマルチメディアの利用環境は?
 Q6:図書館の《メタデータ》とは?
 Q7:インターネットと情報発信とは?
 Q8:附属図書館のホームページについて
 Q9:OPACの学外利用について
 CD-ROM解説一覧
 コメント   伊藤  洋

Q1:まず、マルチメディアを今回テーマにした理由は何でしょうか。

A1:昨今、社会の情報化とともにマルチメディアへの関心が高まっています。
たとえば、マルチメディアという言葉自体がコンピュータ関連の専門辞典だけでなく、一般の辞書にも収録されていることを見てもわかります。
現在山梨大学附属図書館では総合情報処理センターの協力を得て、マルチメディアオンディマンド情報システム(YINS-MOD) を構築しております。
この一環として、昨今の9月よりCD-ROMネットワーク版を使用し学内LAN経由で利用者が必要とする情報を直接入手できるシステムの試験運用を開始しました。

このシステムは、「ネットワークこととい」という辞書サーバシステムでEPWING規約 (第3版)に準拠した辞書検索ソフトで、同一検索画面を使って異なったCD-ROMのソフトが検索できる大変便利なシステムです。

この(柊マルチメディア(稗という言葉を調べるために、岩波書店の(柊広辞苑(稗、三省堂の(柊ワードハンター(稗、自由国民社の(柊現代用語の基礎知識’97(稗という三つの辞書ソフトにおいて、(柊複数の書籍組み合わせ(稗を指定し検索をかけますと、いずれの辞典、用語辞典にも該当した用語と詳細内容が表示されます。これをみても今やマルチメディアと云う用語が完全に一般化された言葉であることがわかります。
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Q2:文部省などではマルチメディアを大学教育面にどう生かそうとしているのでしょうか。

A2:学内の教職員の方々から、大学教育に関しての提言に関する資料の依頼が度々あります。そんな関係から、官公庁関係のWebホームページを注意して見ていますが先般も、文部省のホームページにある(柊審議会情報(稗のなかで(柊大学審議会(稗を開きましたら、教育へのマルチメディアの積極的活用として2件の答申がなされていました。この場合、マルチメディアとは主として衛星通信遠隔教育をさしています。

第1点は、《通信制の大学院》についてですが、このなかでは、大学院制度の弾力化で、社会人の積極的受入の手段として通信制の制度創設を提言しています。  (詳しくは、http:// www.monbu.go.jp/ )

第2点は、《遠隔授業》についてでして、この内容は、衛星放送など情報通信技術の進展と高等教育の将来像を視野に入れ、マルチメディアを活用しながら、隔地間でテレビ会議式に教育を行うものです。

これらの実例としては、すでに、(柊平成10年1月26日付文教ニュース(稗にも、東京工業大学で、《衛星通信遠隔教育の実態視察行われる》などと具体例も出てきています。
このように、マルチメディア化は、国レベルにおいても、大きな方向転換を図っており、大学の教育面にも大きく影響をあたえようとしています。

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Q3:大学教育におおきな変化をもたらそうとしているマルチメディアに対して、本大学附属図書館はどのような対応を考えていますか。

A3:今、大学に求められる課題として、《図書館における教育支援機能の強化》があります。学内LANが整備され、学生自身がインターネットを通じて情報をじかに発信したり受信したりできるなど教育環境が飛躍的に改善されるなか、学生の情報リテラシー習得やネットワークを利用した新たな教育のあり方が問われています。
このことから、カリキュラムと緊密にリンクした、学生の学習を支援する電子化情報サービスを実現したいと思います。
具体的な取組として二つの側面から、マルチメディア化の推進を進めています。

   第1点としては、《総合情報処理センターとの強力な連携体制》です。
平成9年度より本学の情報処理センターは省令施設の総合情報処理センターに格上となりました。
それに伴うシステムと機種更新では、総合情報処理センターと図書館が協力しあい、先程もちょっとふれましたが、 (I"マルチメディアオンディマンド情報システム(YINS-MOD)(I#を構築しております。
このシステムの目的は、要するにマルチメディアコンテンツを学内外にサービスすることです。その内容としては、本学キャンパスネットワークを介して、図書館の電子図書を関覧したり、マルチメディアの共同視聴を行ったり、また電子図書の制作及び配信することを通して、教育と研究を支援し、学内広報の場を提供し、また学術情報発信等を行うことなのです。

第2点としては、《図書館システムの更新によるマルチメディア化の推進》があります。
 現在の図書館業務電算化システムは平成10年度に更新の時期を迎えます。このシステム更新に際して、学内LANを有効に利用し教育研究を支援するという観点から、各研究室から図書資料を発注したり、文献複写の依頼を直接出来ればと考えています。
また、オンラインの蔵書検索システムであるOPACも、将来を見通して、より進んだ情報が発信出来るようレベルアップに努力したいと思っています。
その他、ビデオ、CD-ROM、ネットワークCD-ROMなどのソフトの充実を図り、利用者の皆さんが求める情報の提供をと心がけていきたいと思います。
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Q4:マルチメディアオンディマンド情報システムについてもう少し具体的にご説明いただけますか。

A4:先ほど申し上げたように、総合情報処理センターの協力もとに次のマルチメディアサーバ/クライアントシステムが導入されました。

1.MODサーバシステム 
  このシステムは、学生の学習また研究の支援として、担当教官作成のビデオや市販のビデオ、ビデオCDなどを必要に応じインストールし再生を可能とします。なお、ひとつのビデオソフトへの同時アクセスは約20人位までは可能だと考えています。
また市販のビデオソフトなどについては、どれが(柊使用許諾権(稗をクリアーできるか、図書館として個別に調査をしている最中です。
なお、サーバは総合情報処理センターに設置することとなりました。

  2.CD-ROMサーバ
学内LANに接続した約1000台のPC等から、辞書・事典・法規集などのCD-ROMにネットワークを介して24時間中いつでもアクセスし検索できるサービスシステムです。  このサービスの内容は

(1)「ネットワークこととい」辞書サーバシステム
  このサーバシステムは、EPWING(X4081JIS規格)で統一されたCD-ROMソフトで、タイトルは以下の通りです。

  (2)「ネットワーク CD-ROM」版 (ライセンス数5)
  このCD-ROMに関しては、学内LAN上でネットワーク対応となっていますが、統一化が図られてないため、各々閲覧ソフトなどのインストールが必要となります。

(3)「スタンドアローン型CD-ROM」版
その他、図書館では、スタンドアローン型で次のCD-ROMソフトの検索が可能です。

 なお、ネットワークことといの利用方法については「図書館だより No.14」
(http://nashilib1.lib.yamanashi.ac.jp/tayori.html)
雑誌記事索引の利用方法については、「図書館だより No.15」
(http://nashilib1.lib.yamanashi.ac.jp/tayori.html)
 をご覧いただきたいと思います。

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Q5:附属図書館の館内でのマルチメディアの利用環境はどうなっているでしょうか。

A5:それにつきましても、以下のようにあらたにマルチメディア閲覧室を用意するなど向上が図られています。

(1)マルチメディア閲覧室
10名程度の少人数によるグループ研修の場として、電子図書の閲覧、MODなどの視聴を主とした閲覧室です。マルチメディアPC、書画カメラ、マルチシンク液晶プロジェクタ、60インチスクリーンが設置されました。室内は円型テーブルを配備、迫力ある画像等が期待出来ます。

(2)図書館YINS (Yamanashi Information Network System) 端末
平成7年9月より学内共同利用端末として図書館内にパソコン10台が設置され、蔵書検索用などに使われていました。これは平成6年度より大学院生を含む4000人の山梨大学生全員にアカウントが供与されたことに対応し,情報リテラシーの強化を図ることを目的としたものです。 図書館では、特に情報処理教室の端末の画面メニューにOPAC蔵書検索を加えて貰っておりますが、利用率は大変高く、設置台数増が望まれていました。今回、この要望をうけ図書館内にマルチメディアPC20台の増設を行いました。

 100Base-TXHUBを1階から3階まで配備し、1階自習室/YINS端末室に25台(うち15台が新システム)を設置し,さらに2階の3台および3階の2台を機器更新しました。そのうちで2階マルチメディアPC3台には、イメージスキャナを加え、イメージだけでなく文字情報もコンピュータに取り込めるようにいたしました。

  こうしたシステムを使って、MODサーバ、CD-ROMサーバなどからの画像情報、辞書・事典情報、図書館OPAC蔵書検索、インターネット、E-mail、ワープロなど多種多用のアクセスが可能となりました。

   (3)図書館デジタル資料作成・提供サーバ
学内広報、近代文学文庫・大型コレクションなどの貴重書を中心に電子図書の製作および配信を主たる目的に、電子ファイリングシステムとして図書館電算室に設置しました。
なお、システム構成は、 演算速度10 SPECfp_95,7.86 SPECint_95、 主記憶容量128MB、 ディスク容量2GB+9GB、 21インチカラーマルチシンクディスプレイ、 12倍速CD-ROM、 640MB以上のMOドライブ、 DATドライブ、 スキャナ(600dpi ,RGB各色256階調) 1台 からなっています。
このようにMODから資料の電子化まで、図書館も急激に電子図書館への準備が整いつつあります。これらのハードから利用者が求める情報発信を、一日も早く実現したいものと思っています。
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Q6:先ほどから「情報の発信」と云う言葉が随所に出てきますが、

A6:長い図書館生活のなかで、情報の発信がこのようにグローバルに出来る経験は初めてです。今までの図書館が(柊静(稗とするなら、現在の図書館は(柊動(稗の時代だといえます。
社会のグローバル化や地球のボーダレス化は情報の多様化を生みだす反面、情報の氾濫はいかんともしがたい状態となっています。この現象は、大学においても例外でなく、あり余る情報からいかに自分の求める資料を迅速に入手出来るかが重要な問題となっています。
この問題を解決する手段として、オンラインやCD-ROMによる各種のデータベースが出現しています。この結果、情報そのものに対する新しい価値観が生まれています。
そこで、図書館として「情報の発信」にどのように対応していくかが問題なのです。いま、インターネット上には、大量の情報が提供され、これを検索するサービスも多種多様な形で流れています。しかしながらこれらの検索サービスのツールは、ユーザーが求める情報以外のものが大変多く、また人手を介して作成するものは情報のタイムラグがつきものだという問題が起きています。
このような問題を背景として、情報化と効率のよい情報アクセスの担い手としての役割を強めつつある図書館において、最近、《メタデータ》という言葉を良く聞くようになりました。
実は、昨年の10月に「全国図書館大会」が山梨県で開催されました。われわれ県内大学図書館関係者も、大会2日目の第3分科会で、「電子図書館化へのさらなる前進ーその手段と課題」をテーマに4人の先生方の講演をお手伝いしました。
この講演のなかで、図書館情報大学の永田冶樹氏が、この「メタデータ」についての重要性について詳しく述べています。

永田氏いわく、《メタデータ》とは、端的に言えばデータのデータで、目録、索引のようなものであるとし、現在、総合目録データベースとOPACが関連していないのが現状であるが、これをつなぎ、OPACの中に違った情報にも到達できるようなメタデータを入れる必要があるとしています。

図書館としては、今まで蓄積した《メタデータ》をどのように学内の利用者の利便に対して反映していくか考えなくてはなりません。加えて、インターネットの出現により、まさにクモの巣のごとく広がった全世界に向けて、どのように情報を発信していくか考える必要があります。これが今後の図書館の生きのびるための試金石であり、正念場ではないでしょうか。

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Q7:それでは、現在「動」がでてきた図書館はどんな方法で情報の発信をしますか。

A7:何と云っても、インターネットを利用した情報発信ではないかと思います。先般、ある新聞にこんな記事が載っていました。

 ☆★インターネット人口、日本2位☆★
インターネット産業年鑑がこの12日に発表した統計によると、1997年のインターネット利用者数は世界全体で9996万人であり、一億人の大台にあと一歩となったとしています。  国別の利用者数をみると、米国が5468万人でトップをしめており、日本は、797万人で二位、三位は英国583万人、四位はカナダ、五位はドイツとなっていると報じています。(朝日新聞山梨県韮崎版1998年1月14日朝刊)
 なお、詳しいデータはインターネット検索エンジン"goo"(グウ)からも検索できます。(http://www.goo.ne.jp/index.html) キーワード入力欄に「インターネット人口」+日付検索欄に「1998年1月1日以後で検索」と指定し、検索開始ボタンをクリックしてください。より詳しい情報が得られます。
また、『「超」勉強法 実践編』(野口悠紀雄、講談社、1997年) 読んでいましたら、インターネットの出現により、勉強環境まで変わると書いてありました。 この本で、特に興味深い点はインターネットと英語の重要性を強調していることです。

☆★インターネットの時代は、英語の時代である☆★
 グローバルな情報を得ようとするなら英語の習得が不可欠、得られる情報の量と質の格差が非常に大きい。今後、インターネット時代の英語の優位性ますます強まる(p.47)。

☆★パソコンが大きく変える勉強環境☆★
アメリカの学生にとって、インターネットを研究活動に使うのは、ごく当たり前の日常事になっている(p.157)。 数ヶ月前にMIT(マサチューセッツ工科大学)の大学院からの短期留学生が、到着もそこそこに、「インターネットを使えるか?」と質問があった。  数年前であれば、「図書館を使えるか」と聞いたことであろう。時代は確実に変化している。

上記2点を見ても、これからの時代、インターネットの利用は避けて通れない思いがします。
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Q8:本図書館の情報発信について具体的にお聞かせください。

A8:図書館では、平成7年9月よりWWWホームページを工学部の大学院生のボランティアにより作成公開をしており、これまで2度程バージョンアップをして、大幅に内容を変えています。  先般図書館のホームページについて、より魅力的な内容にしようということで、図書館でホームページ作成の担当者を決め本格的な取り組みを開始しました。  担当者あてに、館員がWebホームページにのせたい項目とか情報収集に役立つようなサイトへのリンクづけなどを提言するのです。
 つぎのバージョンアップを行うために、今TEST用ホームページで、新しい構想をねっています。

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Q9:本図書館の蔵書にない図書の検索についてはいかがでしょうか。

A9:現在国立大学を中心とした附属図書館同士の相互利用サービスがありますが、それとは別にOPAC蔵書検索システムを使って、利用者が画面上で直接に県内の他の図書館の蔵書を検索することが考えられています。

 山梨県内にもOPAC蔵書検索のリンクを張れる機関が増えてきたので、県内複数の図書館をネットワークで結び直接に図書を検索することも可能になりつつあります。リンク先の機関の蔵書構成が、宗教・仏教・法律・教育・医学・国文学・文学と大変バライテーに富んでいるので本学の利用者にとってよいことになりますし、また逆に相手方の利用者にとってそちらの図書館にない本学の蔵書を利用できてとても都合の良いことなのです。
 また、山梨県立図書館による「山梨県図書館情報ネットワーク」は、加盟館31館、蔵書数約133万冊のデータベースであり、郷土資料として「甲州文庫」などもいずれ手掛けていくと聞いています。
その他のOPAC検索システムとしては、九州大学附属図書館で「多機関OPAC横断検索」が稼働しています。

http://www.lib.kyushu-u.ac.jp/index-j.html

 これは、筑波大、千葉大、電通大など24機関がリンクされており、利用者は、検索キーワードを入力後、求める機関を指定し検索ができます。  また、これに類似したシステムとして、学術情報センターの「総合目録データベースWWW検索サービス(NACSIS Webcat)があり、こちらは全国、国公私立大・共同利用機関・短大・高専・その他584機関(1997,12,31現在)の所蔵状況がわかります。

http://webcat.nacsis.ac.jp/

その他、外国においても、UnCoverを始め、いろいろな機関でOPACが可能となっており、図書館のホームページに出来るだけ掲載したいと思います。

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どうも有り難うございました。附属図書館のマルメディア化や電子化への取り組みがよく理解できました。
最後に伊藤総合情報処理センター長から対談のコメントを頂きたいと思います。